蛍火
「……ばかだね、私の名前を褒めても何も出ないっていうのに」
──ふわり、と。
花がほころぶような、柔らかな笑みだった。
「ねぇ、」
胸が痛かった。どきっとしたのだ。その笑みに。こんなにも綺麗に笑うのかこの子は、と。
「な、なんだ、」
「どうしたの、急にどもって……、まぁいいや。君のこと、『ゆう』って呼んでもいい?」
「ゆう?」
「そ。君、他にそうやって呼ぶ人いる?」
「いないけど…」
「そう。そうなの」
ふふふ、と彼女は笑う。嬉しそうに、楽しそうに。あぁ、胸が痛いから止めてくれ。そんな綺麗な笑顔を向けられることに、慣れてないんだ──そう思うのに、どうしてかまた見たいと思ってしまう。