蛍火
第6章

「……っ、」

「ましろ!?」

ましろの家に通うようになって三日目。彼女はまた発作を起こした。
麦茶をコップに注いでいた優夜は彼女が居間でうずくまったのを見て、がちゃりと乱暴にコップを置くとましろの側へと走る。
ぐ、と胸を押さえ汗ばむ彼女の背中を優夜はそっとさすった。頬は青ざめており、ましろは自分では動けないようだった。

「ましろ、苦しいのか!?待ってろ、ハルのところへ連れてってやるから…!」

ハルのところまで運ぶ。それが容易なことではないことくらい、優夜だって分かっていた。
今日は真夏日。外は38度もあるし、車も運転免許もここにはない。自分はここに自転車で通っているから自転車はあるが、彼女をどうやって運ぶというのだろう。
ハルのいる医院までそこまで距離はないものの、苦しむましろに自分に掴まってろ等とも言えない。力が抜けたりしてましろが転ぶ可能性がある。それだけは嫌だった。

ここで選べる選択は、自分が運ぶ以外にない。
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