蛍火
「ましろ、昼飯食ったか?」
「……食べてない」
めんどくさい、という感情を惜しみなく出したかのような表情に優夜は慣れたように笑う。それにましろは顔をむっとさせた。
「あ、ちょ、待てよ!閉めんな!」
無言で戸を閉めようとしたましろに、優夜は慌てて戸に手をかけてそれを阻止する。
ぐぐぐ、とお互い譲り合うこともせずに、戸はその場でとどまってしまっているのに止めることをしない。ギギギ、と、古いそれは鈍い音をたてた。
「おいましろ。昼飯は食えって何度も言ってるだろ」
「ゆううるさい」
「うるさいってなんだ!食わないとダメだろ!」
「私がどうしようが勝手…っ!」
「俺が心配なんだっつーの!そんな細っこいのに食わねえとか、今日なんて暑いんだからなおさらダメだろ!」
「君は私の保護者なの?」
「お父さんでも何でもいいから!とりあえず食えよ!」
「じゃあおじさん…っ」
「それは却下だ!てかチョイスが悪意しか感じられねぇよ!」
「何でもいいって言ったのそっちのくせに…!」
「そうだけど!」