三十路令嬢は年下係長に惑う
「いえ、ダメです、私と神保さんで対応しますから」
水都子は、何故自分でそう言ってしまったのかわからなかった。間藤の目つきに不穏なものを感じたという事もあるが、坪井が間藤に送る秋波のようなものがどうにも気にかかったからだ。
きっぱりという水都子に、坪井は少し不服そうにしていたが、対応してくれるならそれでいいと思ったのか、すぐに態度を変えた。
「どっちでもいいけど、早くね」
ひらひらと金魚のように手をひるがえしながら坪井は更衣室の方へ歩いて行った。
「あれって、やっとけ、って事ですかねー」
今更驚くに値しないという気持ちで鈴佳は坪井の背中を見送りながら、プリンタ本体の調子を見るために移動を始めた。
「……そういうわけなんで、少しだけ場を繋いでおいていただけますか?」
水都子が言うと、あきらめたように笑いながら間藤が答えた。
「かまいませんが、俺、一応上司なんですけど」
「そうですね、でも、なんだかよくない事が起こりそうだったんで」
「よくない事って?」
「坪井さんをしかったりとか」
「そりゃするでしょう、こういう事が起こり得る運用をしていたせいでこっちはとばっちりを食ったようなもんなんですから」
「それについては私も考えは同じです、でも、ここで坪井さんに直接間藤係長から言うのはあまりよくないのではないかと思ったものですから」
きっぱりと言う水都子の言葉に、間藤も気づいたものがあったのか、声の調子を少し落とした。
「……まあ、そうですね、そうかもしれません」
「私と鈴佳さんにお任せいただけませんでしょうか、順序が逆になってしまった事はお詫びいたします」
素直に水都子が頭を下げたので、間藤はそれ以上追求しては来なかった。
「先に乾杯はしちゃいますよ?」
「ええ、どうぞ」
間藤に微笑みかけてから、水都子は鈴佳について機械の方を見に行った。
水都子は、何故自分でそう言ってしまったのかわからなかった。間藤の目つきに不穏なものを感じたという事もあるが、坪井が間藤に送る秋波のようなものがどうにも気にかかったからだ。
きっぱりという水都子に、坪井は少し不服そうにしていたが、対応してくれるならそれでいいと思ったのか、すぐに態度を変えた。
「どっちでもいいけど、早くね」
ひらひらと金魚のように手をひるがえしながら坪井は更衣室の方へ歩いて行った。
「あれって、やっとけ、って事ですかねー」
今更驚くに値しないという気持ちで鈴佳は坪井の背中を見送りながら、プリンタ本体の調子を見るために移動を始めた。
「……そういうわけなんで、少しだけ場を繋いでおいていただけますか?」
水都子が言うと、あきらめたように笑いながら間藤が答えた。
「かまいませんが、俺、一応上司なんですけど」
「そうですね、でも、なんだかよくない事が起こりそうだったんで」
「よくない事って?」
「坪井さんをしかったりとか」
「そりゃするでしょう、こういう事が起こり得る運用をしていたせいでこっちはとばっちりを食ったようなもんなんですから」
「それについては私も考えは同じです、でも、ここで坪井さんに直接間藤係長から言うのはあまりよくないのではないかと思ったものですから」
きっぱりと言う水都子の言葉に、間藤も気づいたものがあったのか、声の調子を少し落とした。
「……まあ、そうですね、そうかもしれません」
「私と鈴佳さんにお任せいただけませんでしょうか、順序が逆になってしまった事はお詫びいたします」
素直に水都子が頭を下げたので、間藤はそれ以上追求しては来なかった。
「先に乾杯はしちゃいますよ?」
「ええ、どうぞ」
間藤に微笑みかけてから、水都子は鈴佳について機械の方を見に行った。