三十路令嬢は年下係長に惑う
三十路令嬢告白される
水都子は、そのまま固まってしまった。色々な考えが頭を駆け巡る。
たとえば、自分と結婚したならば、それはすなわち間藤にとっては玉の輿なのだろうか、とか、そういった事だ。
手を払いのけて、言う。
「からかわないで下さい」
「からかってなんかいません、俺は本気で」
「だったら、哀れみですか? 結婚式当日に花婿に逃げられた女への」
「違います、いや、違わないっていうか、その、あの時、白いウェディングドレスを着て、走ってきた貴女は、とてもきれいでした。あの姿で、あの場所で、どれほど惹かれたところで、もう、誰かのものになっている女性で、不毛な事だと思ったら、違った」
間藤は、あの日の事を思い出しているようにしながら続けた。
「本当に、きれいだったんです」
「私、年上ですし」
「二つしかかわらないじゃないですか、十歳とか一回りならともかく、充分許容範囲です、……それとも、あなたは、年下は嫌いですか?」
上目遣いで見上げる間藤は、まるで小動物のような顔で、日頃のりりしさとは違ったなんともいえないかわいらしさがあった。前髪をおろしているだけ、赤面しているだけで、こんなに印象が変わるものなのか、と、水都子は驚き、そして、ずっと胸が締め付けられそうになるほどどきめいていいる事に気づいていた。
「いえ、……嫌いという、わけでは」
「じゃあ!」
ぱっと顔を明るくした間藤の背後には、大型犬のしっぽが揺れているようにも見える。
「でも、その、社内恋愛というのは……」
単に、社長副社長の姉だからなのでは、とは、怖くて聞くことができなかった。水都子は、言葉にしていないだけで、すでに気持ちは落ちていた。
「ダメ……ですか」
うなだれる間藤が愛おしくて、水都子は思わずその髪に触れた。わずかに濡れていて、少し固い髪の心地よさに、髪を撫で回すと、
「……何してるんですか」
拗ねたように間藤が言った。
「いや、かわいいなあと思って」
それでも、慎夜よりは年上なのだ、と、思うと、水都子はなんだか不思議な気持ちがした。
「たった二つで、年上ぶらないで下さいよ」
髪に触れていた腕を間藤が掴み、立ち上がると、水都子の手をとって、間藤はそのまま水都子をソファーベッドに押し倒した。
ただただ驚いて、水都子は自分を組み伏せた間藤を見上げた。
「え……っ、と」
「言ったでしょ、俺はあなたの事が好きなんです、こんなチャンス放っておくと思いますか? ……だいたい、無防備すぎるんですよ、貴女は」
たとえば、自分と結婚したならば、それはすなわち間藤にとっては玉の輿なのだろうか、とか、そういった事だ。
手を払いのけて、言う。
「からかわないで下さい」
「からかってなんかいません、俺は本気で」
「だったら、哀れみですか? 結婚式当日に花婿に逃げられた女への」
「違います、いや、違わないっていうか、その、あの時、白いウェディングドレスを着て、走ってきた貴女は、とてもきれいでした。あの姿で、あの場所で、どれほど惹かれたところで、もう、誰かのものになっている女性で、不毛な事だと思ったら、違った」
間藤は、あの日の事を思い出しているようにしながら続けた。
「本当に、きれいだったんです」
「私、年上ですし」
「二つしかかわらないじゃないですか、十歳とか一回りならともかく、充分許容範囲です、……それとも、あなたは、年下は嫌いですか?」
上目遣いで見上げる間藤は、まるで小動物のような顔で、日頃のりりしさとは違ったなんともいえないかわいらしさがあった。前髪をおろしているだけ、赤面しているだけで、こんなに印象が変わるものなのか、と、水都子は驚き、そして、ずっと胸が締め付けられそうになるほどどきめいていいる事に気づいていた。
「いえ、……嫌いという、わけでは」
「じゃあ!」
ぱっと顔を明るくした間藤の背後には、大型犬のしっぽが揺れているようにも見える。
「でも、その、社内恋愛というのは……」
単に、社長副社長の姉だからなのでは、とは、怖くて聞くことができなかった。水都子は、言葉にしていないだけで、すでに気持ちは落ちていた。
「ダメ……ですか」
うなだれる間藤が愛おしくて、水都子は思わずその髪に触れた。わずかに濡れていて、少し固い髪の心地よさに、髪を撫で回すと、
「……何してるんですか」
拗ねたように間藤が言った。
「いや、かわいいなあと思って」
それでも、慎夜よりは年上なのだ、と、思うと、水都子はなんだか不思議な気持ちがした。
「たった二つで、年上ぶらないで下さいよ」
髪に触れていた腕を間藤が掴み、立ち上がると、水都子の手をとって、間藤はそのまま水都子をソファーベッドに押し倒した。
ただただ驚いて、水都子は自分を組み伏せた間藤を見上げた。
「え……っ、と」
「言ったでしょ、俺はあなたの事が好きなんです、こんなチャンス放っておくと思いますか? ……だいたい、無防備すぎるんですよ、貴女は」