三十路令嬢は年下係長に惑う
水都子の本領?
一番に目覚めたのは鈴佳だった。
見知らぬ天井、ふかふかしたベッド、自分のせんべい布団とは全く違う寝心地に起き上がると、ベッドの下には水都子が、少し離れたリビングのソファーベッドには間藤が寝ていた。
昨晩あったであろう事に気づいて、真っ青になり、しかし眠っている二人を起こすわけもいかずに、ベッドの上で正座していると、スマホのアラームの音がして、すぐに水都子が起き上がった。
「あ、起きた? 気持ち悪く無い? シャワー使う?」
起き抜けでもいつもと変わらないテンションの水都子に、鈴佳はベッドから飛び降りるようにして土下座した。
「も……申し訳ありませんッッ!!」
「す……鈴佳さん、顔をあげて、そんな、あと、間藤さんまだ寝てるから」
あわてて口をつぐむと、今度はコメツキバッタさながらに、床に額をぶつけそうな勢いであやまる鈴佳の肩を掴んで、水都子は上を向かせた。
「大丈夫、気にしてないし、……あと、多分あやまるとしたら私じゃなくて……」
水都子が言いかけたところで、むくり、と、間藤が起き上がり、一周したのではと思えるほどの角度で間藤が水都子達の方を向いた。
「神保〜、てめえ、昨夜のアレ、忘れたとは言わせねえぞ」
ギリギリギリ、と、機械仕掛けの人形が動くようなぎこちなさで間藤が言って、起き上がった。
「あれ? 間藤さんも? お泊り、したんですか?」
「え?鈴佳さん、覚えてないの?」
「あー、そのー、お店にいたところー、まではー、覚えているんですがー」
白々しくあさっての方向を向いて、間藤からの視線をはずすように鈴佳が言うと、起き上がった間藤が鈴佳の首を締めるようにして掴んだ。
「てめえはッ! だから酒飲み過ぎんなっつったろーが!」
「いやあ、だってえ、水都子さんが泊めて下さるって言うから安心しちゃってー」
「俺の背中にエクスプロージョンした事は覚えてないってのか、ああン?」
「あー、どうりでスッキリしてると思ったー」
「神保おおおおお!!!」
間藤と鈴佳がどつき漫才をしている間に、水都子はキッチンへ行き、コーヒーを入れ、トーストを焼き始めた。
「朝ごはん、食べますよね?」
すごむ水都子に間藤と鈴佳はやはりあの社長のお姉さんだ、と、妙に納得してからダイニングテーブルについた。
「びっくりした、本当に何も覚えてないんだ」
給仕をしながら水都子が言うと、鈴佳は恐縮して「えへへ」と笑った。
「えへへじゃねーよ」
間藤が言うと、鈴佳はもう一度恐縮した。
「そういえば神保、お前、源には連絡したのか?」
間藤が言うと、鈴佳はあわててスマホを探して取り出した。
「……電池、切れてます」
水都子がコンセントを貸して、朝食そっちのけで鈴佳が充電を始めて間もなく、鈴佳から細い悲鳴が聞こえてきた。
「お家の方、ですか?」
水都子が尋ねると、間藤が言った。
「神保の同棲相手です、というか、どちらかというと神保の彼氏、源てんですが、そいつの方が俺とは付き合いが長いんですよ」
「え……じゃあ」
「言ったでしょ? 何もないって」
ウインクして見せる間藤に、いつの間にか赤面した水都子は、
「コーヒー、おかわりいりますよね?」
と、言い残してあわててキッチンへ行った。
見知らぬ天井、ふかふかしたベッド、自分のせんべい布団とは全く違う寝心地に起き上がると、ベッドの下には水都子が、少し離れたリビングのソファーベッドには間藤が寝ていた。
昨晩あったであろう事に気づいて、真っ青になり、しかし眠っている二人を起こすわけもいかずに、ベッドの上で正座していると、スマホのアラームの音がして、すぐに水都子が起き上がった。
「あ、起きた? 気持ち悪く無い? シャワー使う?」
起き抜けでもいつもと変わらないテンションの水都子に、鈴佳はベッドから飛び降りるようにして土下座した。
「も……申し訳ありませんッッ!!」
「す……鈴佳さん、顔をあげて、そんな、あと、間藤さんまだ寝てるから」
あわてて口をつぐむと、今度はコメツキバッタさながらに、床に額をぶつけそうな勢いであやまる鈴佳の肩を掴んで、水都子は上を向かせた。
「大丈夫、気にしてないし、……あと、多分あやまるとしたら私じゃなくて……」
水都子が言いかけたところで、むくり、と、間藤が起き上がり、一周したのではと思えるほどの角度で間藤が水都子達の方を向いた。
「神保〜、てめえ、昨夜のアレ、忘れたとは言わせねえぞ」
ギリギリギリ、と、機械仕掛けの人形が動くようなぎこちなさで間藤が言って、起き上がった。
「あれ? 間藤さんも? お泊り、したんですか?」
「え?鈴佳さん、覚えてないの?」
「あー、そのー、お店にいたところー、まではー、覚えているんですがー」
白々しくあさっての方向を向いて、間藤からの視線をはずすように鈴佳が言うと、起き上がった間藤が鈴佳の首を締めるようにして掴んだ。
「てめえはッ! だから酒飲み過ぎんなっつったろーが!」
「いやあ、だってえ、水都子さんが泊めて下さるって言うから安心しちゃってー」
「俺の背中にエクスプロージョンした事は覚えてないってのか、ああン?」
「あー、どうりでスッキリしてると思ったー」
「神保おおおおお!!!」
間藤と鈴佳がどつき漫才をしている間に、水都子はキッチンへ行き、コーヒーを入れ、トーストを焼き始めた。
「朝ごはん、食べますよね?」
すごむ水都子に間藤と鈴佳はやはりあの社長のお姉さんだ、と、妙に納得してからダイニングテーブルについた。
「びっくりした、本当に何も覚えてないんだ」
給仕をしながら水都子が言うと、鈴佳は恐縮して「えへへ」と笑った。
「えへへじゃねーよ」
間藤が言うと、鈴佳はもう一度恐縮した。
「そういえば神保、お前、源には連絡したのか?」
間藤が言うと、鈴佳はあわててスマホを探して取り出した。
「……電池、切れてます」
水都子がコンセントを貸して、朝食そっちのけで鈴佳が充電を始めて間もなく、鈴佳から細い悲鳴が聞こえてきた。
「お家の方、ですか?」
水都子が尋ねると、間藤が言った。
「神保の同棲相手です、というか、どちらかというと神保の彼氏、源てんですが、そいつの方が俺とは付き合いが長いんですよ」
「え……じゃあ」
「言ったでしょ? 何もないって」
ウインクして見せる間藤に、いつの間にか赤面した水都子は、
「コーヒー、おかわりいりますよね?」
と、言い残してあわててキッチンへ行った。