今でもおまえが怖いんだ
駅を出ると、ロータリーにチェロキーを見付けることができた。

中で音楽を聴いて待っていてくれればいいのに、彼は車の横に立ってスマホを触っていた。
私が声をかけるより先にパッと顔をあげてくれて、「お疲れ様」と静かに笑ってくれる。

助手席のドアを開けてもらい中へ入ると、アンダーグラフが流れていた。
懐かしー、と笑うと、「ね、懐かしいよね」と同じ歳の彼も私と同じように笑ってくれた。

「最近すき家に1人で入った時に店内でこれのカバーが流れててそれで急に再熱したんだよね、改めて聴くと良いよね、当時は当たり前に流れていたから気にしなかったんだけれど」

チェロキーに乗っていても松屋に入るんだねと私が茶化すと、「ちゃんと徒歩で食いに行きましたー」と彼もふざけて返してくれる。

でもこの辺は牛丼屋もないから大変だよねと車を走らせながら彼が言う。とうこちゃんは都会暮らし長かったから特につらそうだよね、って。

「そんな話してると松屋食べたくなるじゃん」と言ってカーナビで牛丼屋を探すと、15分ほどかかる場所に吉野家があった。
吉野家で食べる? と私が言うと、「すき家じゃないとダメだね今日は」と直樹君が却下する。

高速乗るけれど、付き合ってくれる?と言われ、まだ空腹の限界でもなかったから頷いた。
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