今でもおまえが怖いんだ
「なおき君は、高い方だった?」

ハタチを超えた今、直樹君の方が私よりも5センチ以上は高い。
特別大袈裟に見上げるほどではないのだけれど、たまに何かの拍子に大きいなあと思うことがある。

「いや俺ずっと小さかった。中学の途中までは前から数えた方が早いくらい」

今でも高い方ではないからねえと彼が話しているうちに車は高速に乗った。

「でも背が小さい以外は普通の小学生だったかも。勉強はできなかったけれど体育が好きで、将来の夢が野球選手で、給食はおかわりじゃんけんするみたいな」

「ああ、いたね。そういう子」

うんうんと頷きながら、私は自分の記憶を探る。
いたっけ。

小学生の頃、直樹君のように私のことを名前で呼んでくれる男子は1人もいなかった。

苗字を呼び捨てか、苗字にさん付け。
背が高かったし勉強もできた。
けれど体が弱いことを理由に体育はいつも見学していて分団登校もできなかったものだから、私は彼らの中に少しも溶け込めなかった。

裏でちょっと嫌な風に言われていたことも、同じ子どもとして扱ってもらえなかったことも、幼いながらに気付いていたし傷付いていた。
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