今でもおまえが怖いんだ
行きつけのラーメン屋はカウンター席が満員で、奥のボックス席に通された。

豚骨ラーメンを待っている間に、私たちはそれぞれスマホを触っていた。

「それ、仕事?」
そう利久さんに聞かれて私は無言のままで頷いた。

「派遣バイト、だっけ」
「うん、融通がきくから」

利久さんはふうんと頷いて、まあ正社員よりはましだよなあと呟いた。

休みたい時に休めて辞めたい時に辞められるのが1番だよ、と彼は続けた。
そう話しながら両手で私の腕を掴んで自分の方へと軽く引き寄せる。

彼が私の長袖のカーディガンをめくった時、思わず鳥肌が立ちそうになった。

前髪の間から、まるで睨むような目つきで彼のキツネ目がこちらを窺っている。

私の顔は真っ青だっただろうか、引き攣っていただろうか。眼球がユラユラと揺れただろうか。
どうなったかは分からないけれど、ただ自分がハッキリとした拒絶を示してしまっているということだけは自覚があった。
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