今でもおまえが怖いんだ

裏口から外へ出ると、メッセージを確認する。
黒のレクサスまでというメールを見て、ホテルの駐車場を離れる。

線路沿いに作られた砂利の駐車場までヒールで走って行くと、何度か乗ったことのある車を見付けた。

後部座席のドアを開けると「お疲れ様です」と少し早口に声をかけられる。
結構な時間オーバーをしてしまっているため、私もやや早口で「お疲れ様です、モンです、宜しくお願い致します」といつもの言葉を口にする。

それじゃあ清算しちゃいますね、というドライバーさんの言葉で私の1日は締めくくられる。
その日1日持ち歩いたデリバッグの中からレシートとお釣りも一緒くたに突っ込んだポーチを出してドライバーさんに渡す。

今日のお給与はこちらになります、とお店からのメッセージの画面を私に見せてくれて、その額を確認する。
実際に渡されたお金を私も再度確認して、ピンと軽く伸ばしてから自分の財布の中へと差し入れた。

「駅までで大丈夫でしたか」
シートベルトを手探りでつけている間に確認をされる。
ハイ、駅までお願いしますスミマセン。
どういう訳だか分からないのだけれどドライバーさんに対して物凄く委縮してしまう癖は、1年経ってもまだ治らない。

何で謝るのと当初は笑っていたドライバーさんたちもやがてこれが私なりの語尾なのだということに気付いて指摘をしなくなった。
ただ未だに新しい方が入ると、言われる言葉は幾つもある。
< 3 / 78 >

この作品をシェア

pagetop