今でもおまえが怖いんだ
ep.07 猪口標門
煙草を吸うために少し開けた窓から、デイドリームビリーバーが聴こえてきた。
ローバーミニのガラスを叩いて良いものか私が迷っている間に、標門さんがこちらに気付いて外へ出てきてくれる。
「これは標門さんの?」
映画やドラマの中でしか見たことのなかった外車を目の前にして、私は少しだけ緊張してしまった。
ドライブに行きませんかと誘われたのは初めてだった。
彼の車を直接見たことはまだなかった。
「うん、祖父のお下がりなんだけれどね」
扉を開けてもらい中へ乗り込むと、先ほどまで煙草を吸っていたにも関わらずそれよりもホワイトムスクの匂いが鼻先をくすぐった。
パインとホワイトムスクとあと少しのジャスミン。
普段標門さんからも微かに漂っている香りだ。
運転席に乗り込んだ標門さんは、また細い煙草を唇で軽く咥えてジッポで火をつける。
彼が使っているワイルドターキーのジッポは、数年前に一瞬だけ付き合った男性と同じもので、見る度にその人に会いたくなる。
ローバーミニのガラスを叩いて良いものか私が迷っている間に、標門さんがこちらに気付いて外へ出てきてくれる。
「これは標門さんの?」
映画やドラマの中でしか見たことのなかった外車を目の前にして、私は少しだけ緊張してしまった。
ドライブに行きませんかと誘われたのは初めてだった。
彼の車を直接見たことはまだなかった。
「うん、祖父のお下がりなんだけれどね」
扉を開けてもらい中へ乗り込むと、先ほどまで煙草を吸っていたにも関わらずそれよりもホワイトムスクの匂いが鼻先をくすぐった。
パインとホワイトムスクとあと少しのジャスミン。
普段標門さんからも微かに漂っている香りだ。
運転席に乗り込んだ標門さんは、また細い煙草を唇で軽く咥えてジッポで火をつける。
彼が使っているワイルドターキーのジッポは、数年前に一瞬だけ付き合った男性と同じもので、見る度にその人に会いたくなる。