今でもおまえが怖いんだ
名古屋駅から発車する急行に乗ると、まだ座席は空いていた。
窓ぎわの席に座って、スマホにイヤホンをさし込む。

先日誰かとドライブへ行った時に車内でかかっていたBGMがやけに気に入ってしまって、こっそり購入した。
最近、目が覚めてからベッドの上でこの歌を聴くことが増えている。
電車での移動時間も、ちょっとカフェへ入った時も、部屋に帰ってぼんやりとする時間も。

別に歌詞が素敵なわけではないのだけれど、メロディラインが好きなわけでもないのだけれど。
どうしてかこの曲は私に寄り添ってくれていた。

名古屋駅から私の最寄駅までは乗り換えもあって45分かかる。

最寄駅前にある駐輪場に原付を停めていて、それに乗ってアパートまでは20分ほど。

雨の日だろうと原付に乗らなければどこへも行けない程の片田舎を意図的に選んだ。
自分の意志ではもうどこへも行けないように、簡単には元の生活を取り戻せないように。せめてものつもりだった。
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