今でもおまえが怖いんだ
「どこにいるの?」

ピピッと車に乗り込む時の音が微かに聞えて来た。
カーナビを入力するような小さな音。

電話をした時既にもう身支度を済ませてくれていたのだと分かる。

「分かんない」

自分でも驚くほど、子どものようなイントネーションだった。

振り返るとラブホテル。
でもそれ以外に何の目印もなかった。

普段車に乗ることもなければ遠出をすることもないものだから、何号線だとか何高速だとかそういうものは一切分からない。

「分かんないかあ」と、直樹君は別に怒る様子もなく溜息もつかないでのんびりした口調のままだ。
「名古屋だよね?」と付け足して聞かれて、「うん、多分」と私は電話なのに頷いてしまう。
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