今でもおまえが怖いんだ
「あ、でも緑区に住んでるんだっけ。ひょっとすると日進とか豊明に行っているかもしれないね。ちょっと待っててね」

苛立たず、落ち着いた声のままで直樹君は愛知県の地図を開いてくれているようだった。

「GPSとか使えたりする?」

優しい口調で訊ねられ、私は「分かんない」とまた子どものような返し方をする。

「そっかー、分かんないかあ」

フフッという笑い声が聞こえてきて、釣られて私も笑いそうになってしまった。

そんな場合じゃないのになあと、爪の剥がれた自分の足を見下ろす。
一晩裸足で歩き続けたせいで、爪先は黒く汚れ、けれど赤紫に腫れていた。
つっかけてきたサンダルはどこか途中でなくしてしまったようだった。

朝が来て誰かに見つかる前にどこかに隠れなくてはと思うのに、財布を持って来ていなかった。

「そうだ。近くにコンビニがあったらそこの店名を教えてほしいな」
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