今でもおまえが怖いんだ
コンビニは少し歩けば案外簡単に見付かった。

イートインコーナーは閉鎖される時間帯だったけれど、待ち合わせだと言うと商品の補充をしていた年配の店員さんがカウンター席を空けてくれた。

夜明け前に裸足でやってきた化粧っ気のない客に鬼気迫るものを感じたのかもしれない。
スタッフルームで淹れたという温かいレモンティーまで差し入れてくれた。

温かい場所に座るとようやくうとうとと眠気がやってきた。

眠ってはいけないからと頬杖を突き直しながら、それでも自分が久しぶりに安心していることに安心した。

このまま私は逃げ切るのだろうと思った。
2度と緑区の部屋へは戻らないのだろうと思った。

離れる覚悟ができたわけではない。
今だって好きという気持ちは変わらない。

けれどもう相手方の気持ちが変わってしまった以上私がどう足掻いたって仕方のないことだって分かっていた。
< 72 / 78 >

この作品をシェア

pagetop