ハツコイ 2
「はい。」
「そっか。…まあ毎日、安座間の顔を見ていれば、仕事もプライベートも順調なことはよくわかるよ。」
そう言って、安原さんは遠くにいる瑠偉の姿を見つけて呟いた。
「なんだか…嬉しいです。」
気づけば、私はそんな風に答えていた。
「嬉しい?」
「上司である安原さんから見て、瑠偉の仕事ぶりは充実して見えるってことですよね。瑠偉は、仕事のこと本当に楽しそうに話してくれるので、そんな瑠偉の思いが認められてるんだなぁと思ったら、嬉しかったです。」
そう言って安原さんを見上げると、優しげな笑みを浮かべて聞いてくれていた。
「それは、倉科にも言えることだよ。」
「え…?」
「俺にとっては、倉科も大切な部下。君の働きもずっと見てきたつもりだ。倉科も、毎日仕事を楽しそうにやっていたこと、安座間に負けずとも劣らないだろ?」
いつだって優しい安原さん。
そうやっていつも、部下を見守ってくれる人。
「安原さん…ありがとうございます。」
「俺こそ、ありがとう。」
私は、お礼を言われるようなこと何もしてない。
でも、安原さんはそういう人。
「さて、そろそろ鬼に捕まってあげようかな。」
安原さんがふっと笑いながらそう呟くと、キョロキョロと辺りを見渡している瑠偉のところへ歩み寄っていく。
そして安原さんが瑠偉に声をかけると、こちらを向いて、こんなに遠くても目が合ったと感じるほどだった。