きみに花束を贈る日
「またね、美南!」

わたしも手を振り返し、机の横にかけていた鞄を肩に掛け、立ち上がる。

すると、どすんと背中に衝撃が走った。後ろにいた誰かにぶつかってしまったみたい。

「ごめん」と言いながらぶつかった主を見ると、幼馴染の太一が立っていた。

「あぶねーだろ綺彩。大丈夫か?」

「ごめんごめん。全然平気」

そう言うと太一はほっとしたようにふわりと笑う。

「綺彩、今日暇?」

わたしはううんと首を横に振って答えた。

「残念ながら、暇じゃないの。委員会でなきゃ」

「ふうん、そうなんだ。部活休みだからどっか誘おうと思ったのに」

太一はサッカー部に所属している。
小中高と続けている事もあり、とても上手くてみんなに慕われている。

太一とは小さい頃から家が近所で、気がつくと一緒に遊んでいたほど仲が良い。

昔はわたしの方が身長が大きかったのに、今では逆転してしまっている。

運動もできて高身長で見た目も良いとなれば女子が放っておくはずがなく、告白されては断るところを何度も見てきた。

「どうして彼女作らないの」と聞いても「なんか違うから」の一点張りで謎なところもある。


「また今度、暇なときは誘ってー。じゃあ、また明日」

「おう、じゃーな」

鞄を肩に掛け直し、教室を出た。

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