恋の証

そう言い、嫌味な笑いを掛け合う先輩お二人の視線の先には、とある男性社員の奥さんが幼い我が子と楽しげに川の側を走り回っていた。
奥さんの格好は、すみれ色のブラウスに膝上丈の白いスカートで、裾の内側から慎ましやかに覗くフリルが動く度に揺れて、なんだかそれまで楽しそうだった。
確かに可愛い格好だけれど……。


「別にどんな服でもよくないか？」


まあ、TPOに合っているかといえばそうでもないかもしれないけれど。


口に出してしまえば、本人たちに聞こえていないことを幸いに、私の独りごちる行為は止まらなくなる。


「突っ込むとこはそこかなあ。いつか本人がなんか違うって思えばテイスト変えればいいだけだし、結婚したとか産んだとかで言っちゃうのって今回に関しては絶対ただの僻みだし、あなたたちが指摘することじゃないっての。てか小さなモンスター相手に乱れず汚さず走り回ってるってかなりの偉業だわ。そんなことしながら低いけどパンプスって、自分にフィットするもの選ぶの上手い人なんだろうなー」