恋の証
「越野さんは、カメラ係なんですか?」


「そんなのあるの?」


「今回から作られたのかと。だって本格的だから、カメラ」


「あいにく係じゃあないよ」


「じゃあ趣味?」


「――、どうだろうね。今日は、撮りたいものがあるかと持ってきただけというかね」


「で、あの可愛らしい小さなモンスターに出会えたと」


私も、越野さんが先輩たちにそうしたように、幼い子どもが駆け回る一家の仲睦まじい方向を指差した。


「違うよ。成田さんを」


「わっ、私……っ?」


「成田さん、背筋いつもぴんとして凛々しいから、綺麗だなって思っていました」


いつもなら絶対に警戒する言葉だったけれど、今日は昼間から呑むお酒で気も緩んでいたのと、初めて話した越野さんが気の合う人だと、たったこれだけの交流で感じてしまった私は、座ったままだった体勢から立ち上がる。


背筋を伸ばして膝もぴんとしてみても、越野さんのことは見上げなければいけないくらい、彼は身長のある人だった。
距離の近づいた越野さんの耳朶が、赤くなっていた。私の姿勢を誉めてくれたせいかもしれない。そこだけ何故か丁寧な言葉だったし緊張していた?


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