恋の証
緩んだ心が、それらを可愛いと思う。
見上げて首が痛くなってしまいそうなくらい背の高い歳上の男の人。そんな人を可愛いだなんて。思うのは初めてのことだった。


「撮ってもいいですよ」


「え」


「最近、ジムで背筋鍛えてたので誉めてもらえて嬉しいです。お酒で気の緩んでいる今なら許します」


「いいの?」


「ああでも、ポーズとったりは無理ですよ。意識しちゃうとそれも無理なので、今から私は川で戯れる子どもたちの中に混ぜてもらってきますから、それをご自由に、なら」


ありがとうと呟く越野さんに、不細工だから正面はやめてくださいとお願いしてから川に走っていったにも関わらず、後日誘われた夕食持に見せてもらった写真には、後ろ姿を写したものに混じって、振り返り越野さんのほうを向いて笑う私の赤らんだ顔があった。


「これは……データ諸とも消滅ものです」


赤い顔は日焼けによるもので、後日、私の鼻の頭の皮はぺりぺりと剥けた。


「なんで。可愛いのに」


文句を言う私を無視し、屈託なく吐くその言葉に私が固まるうち、没収しようと思っていたはずの写真は、越野さんの鞄の中に仕舞われてしまった。


以降、なんとなく、越野さんとは縁あって交流させてもらうこととなる。




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