恋の証
時々、どちらからともなく食事の約束をする。声を掛けるまでの空白期間が一定していることにいつからか気づき、それからは二週間に一度、金曜日の夜は約束の日となった。


「成田さんは、ご飯をもりもり美味しそうに食べるのな。見てて気持ちいい」


「楽しいときは量とか気にしません。でも翌日は調整してますよ。もう気をつけないといけない歳なので。ほら、越野さんは細いんだからもっと食べてください」


「まだ若いのにそれ言う? ――まあ楽しんでいてくれてなによりだ。それと、俺は脱いだらムキムキかもしれないじゃないか。知らないのにガリッてるとか言わないでくれよ」


「二十五過ぎたら少し変わりましたもん。肉体の節目を日々実感してるところです。あと、越野さんがたるんでないくらいは服の上からでも分かりますよ」


「ははっ、なんだそれっ。千里眼だなあ。あ、慧眼か? どっちだ?」


「知りません」


「まあ、俺もそれくらいなら分かるよ。成田さんは別に太ってないって」


「なんて曇った審美眼……。越野さんには解らないだろうけど、ご飯は毎日美味しいし、私困ってるの。――だからほら、ここの唐揚げ凄く美味しいんですからもっと食べて下さい。そうしたらお互いにとっていい結果を呼ぶっ」


男の人の見抜く能力の低さにムカつき、越野さんの口に唐揚げをぎゅうぎゅうに詰め込んでやった。
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