恋の証

日々を重ねるごとに、私は越野さんのことを知っていく。


それは逆も然りで。


越野さんは私より四歳上で、派遣は副業。メインはカメラの仕事をしている。正社員に誘われたこともあるくらい評価があるのに勿体ないと思うけれど、それは越野さんには意味のないことなのだろう。
丁寧に手入れされたカメラは、越野さんの誇りに違いない。最初に趣味ですかと問うたことを謝れば、師匠の長期の撮影に今回は同行させてもらえなかったくらいの未熟な人間だと反省させてしまった。


派遣のシステムを質問していたら、訊きすぎたのか転職も考えていることを見抜かれた。実は同じ会社に元彼がいて、向こうの転勤で速攻で浮気され別れたというのに、共通の知人の話では、来年にはこちらに戻ってくる予定で、私がまだ未練があると思っているとかいないとか……。
正直面倒くさくて心機一転しようと思ってたのだけれど、そうしたら越野さんとも会う機会が減るから思い直したことは、秘密にしておく。


ドライアイでまばたきの多い仕草や、私の帰る夜道を極端に心配してくれるところ。いつからか休日にも会うようになり、私のことを気づかないうちに撮っているときの、八重歯を覗かせて笑っているところ。カメラを構えているから口元しか見えないけれど他はどんな表情なのだろうと越野さんのことを思いインプットばかりする頃には、私は彼のことを好ましく想っていた。
それは、初めて会話を交わしてからそう遠くなかったときのこと。


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