小さな王と美しき女神
一方、その頃、
「デリー、まだ見つからないのか。」
ひっそりと静まりかえった路地裏で、紋章の付いた光る銀の剣を腰にまとった男性。
「はい。東部、南部ともにくまなく探しましたが、見つかりませんでした。北部、西部は別の部隊が捜索中ですが、連絡はありません。」
部下である男からの言葉に、落胆した、胸元に輝く王家の証に、純白の格好をした男。
「そうか。もうよい。」
「お力になれず、申し訳ありません。国内だけでなく、隣国を捜索しましょうか。」
「いや、よい。お前のせいではない。今日はこれまでにしよう。明日の業務にも障るといけないからな。」
この国の王であるヴィンテッド=ロレーヌ=ド=ローランは、悲しげに沈んでゆく夕日を眺めていた。