『続・7年目の本気~岐路』
急報
2人ベッドでゆっくり互いの気持ちを確認し合った
行為のあと、彼の腕枕でまどろむ
ゆったりした時間がこんなにいいもんだとは
思ってもみなかった。
そんな甘い時間を、無機質なスマホの
着信音がぶち壊す。
「……(電話)出ろよ。緊急だったらどうする」
「―― んー、もうっ! しつこいんだからっ」
なかなか鳴り止まない着信音に、いい加減
うんざりしつつ応対に出た。
でも、普段は私より落ち着いてる真緒の
取り乱した声がして ――
『あ、和ちゃん、早う東京に帰って来てっ!!』
「何があったん??」
『めぐが ―― めぐが……』
「真緒っ ―― 真緒? どうしたのよっ」
そのまま泣き出した真緒に代わって詩音さんが
電話口に出た。
『和巴? 詩音よ。詳しい事は会ってから話すわ。
めぐみちゃんが男に刺されて病院に搬送されたの』
「何ですって?!」
『病院は飯田橋の警察病院よ。
なるべく早く帰って来て』
「……わかり、ました」
もう、出張どころではなくなった。
和巴は慌てて通話を切り、
事情を聞いてひどく心配した優しい恋人に、
大阪駅まで車で送ってもらい、
みどりの窓口の戸口を転ぶように駆けくぐった。
和巴は、めぐみの面倒を真緒1人に任せた事、
今さらながら強く後悔していた。
どうして、倉本の調べがはっきりするまで
待っていられなかったのかっ!!
今年の帰省ラッシュは例年より3~4日ほど早く
始まっているらしく。
新幹線並びに高速バスは、
年末年始の帰省客と行楽客で軒並み
100%以上の乗車率だ。
キャンセルなんか、そうそう出るもんじゃない。
1回目のトライ ――
『あー、上り線はのぞみ・ひかり・こだま、とも
全部満席ですね~。高速バスも同様です』
「立ち席でもいいんですが」
『自由席の車両に乗り込むだけでも半日以上は
かかりますよ? この混雑っぷりですからね』
―― あえなく撃沈。
とりあえずキャンセル待ち名簿に名前をインプット
して貰い。
キャンセル待ちの人々が屯するエリアに向かう。
が、捨てる神あれば拾う(救う)神あり。
すっかり意気消沈した和巴の肩をポンと叩く
ごっつい手。
「あ ―― ゼンさん。どうして大阪に?」
詩音の夫で”カミングアウト”の編集長・
羽柴 禅(はしば ひとえ)だった。
「統括部長お得意の無茶振りさ。幸い京極先生は
珍しく素直に原稿を上げてくれたので、お役御免
にはなったがな」
「それは大変でしたね」
「そーゆうお前こそ、どうしたんだよ? 昨日来た
ばかりでもう、ホームシックか?」
「そんなんじゃありませんよぅー。実は ――」
「……なるほどな、しかし ――」
切符を買い求める人々 ――
キャンセル待ちの人々でごった返す、
みどりの窓口を見渡す。
「この分じゃ、今日・明日中の東京行きは不可能
だぞ」
「です、よね……」
羽柴は『しゃーねぇーな』と、和巴の手へ何か
細長い紙片を握らせた。
それは ―― 和巴が一番欲しかった
”東京行きの新幹線の切符”
「使え。グリーン車だぞー」
「で、でも編集長が不在じゃ……」
「指示を飛ばすくらいなら本社でも出来る。それに、
俺が担当してる先生達はほとんどこっちに来てる
んだ」
「そうですか……じゃ、遠慮なく使わせて頂きます」
行為のあと、彼の腕枕でまどろむ
ゆったりした時間がこんなにいいもんだとは
思ってもみなかった。
そんな甘い時間を、無機質なスマホの
着信音がぶち壊す。
「……(電話)出ろよ。緊急だったらどうする」
「―― んー、もうっ! しつこいんだからっ」
なかなか鳴り止まない着信音に、いい加減
うんざりしつつ応対に出た。
でも、普段は私より落ち着いてる真緒の
取り乱した声がして ――
『あ、和ちゃん、早う東京に帰って来てっ!!』
「何があったん??」
『めぐが ―― めぐが……』
「真緒っ ―― 真緒? どうしたのよっ」
そのまま泣き出した真緒に代わって詩音さんが
電話口に出た。
『和巴? 詩音よ。詳しい事は会ってから話すわ。
めぐみちゃんが男に刺されて病院に搬送されたの』
「何ですって?!」
『病院は飯田橋の警察病院よ。
なるべく早く帰って来て』
「……わかり、ました」
もう、出張どころではなくなった。
和巴は慌てて通話を切り、
事情を聞いてひどく心配した優しい恋人に、
大阪駅まで車で送ってもらい、
みどりの窓口の戸口を転ぶように駆けくぐった。
和巴は、めぐみの面倒を真緒1人に任せた事、
今さらながら強く後悔していた。
どうして、倉本の調べがはっきりするまで
待っていられなかったのかっ!!
今年の帰省ラッシュは例年より3~4日ほど早く
始まっているらしく。
新幹線並びに高速バスは、
年末年始の帰省客と行楽客で軒並み
100%以上の乗車率だ。
キャンセルなんか、そうそう出るもんじゃない。
1回目のトライ ――
『あー、上り線はのぞみ・ひかり・こだま、とも
全部満席ですね~。高速バスも同様です』
「立ち席でもいいんですが」
『自由席の車両に乗り込むだけでも半日以上は
かかりますよ? この混雑っぷりですからね』
―― あえなく撃沈。
とりあえずキャンセル待ち名簿に名前をインプット
して貰い。
キャンセル待ちの人々が屯するエリアに向かう。
が、捨てる神あれば拾う(救う)神あり。
すっかり意気消沈した和巴の肩をポンと叩く
ごっつい手。
「あ ―― ゼンさん。どうして大阪に?」
詩音の夫で”カミングアウト”の編集長・
羽柴 禅(はしば ひとえ)だった。
「統括部長お得意の無茶振りさ。幸い京極先生は
珍しく素直に原稿を上げてくれたので、お役御免
にはなったがな」
「それは大変でしたね」
「そーゆうお前こそ、どうしたんだよ? 昨日来た
ばかりでもう、ホームシックか?」
「そんなんじゃありませんよぅー。実は ――」
「……なるほどな、しかし ――」
切符を買い求める人々 ――
キャンセル待ちの人々でごった返す、
みどりの窓口を見渡す。
「この分じゃ、今日・明日中の東京行きは不可能
だぞ」
「です、よね……」
羽柴は『しゃーねぇーな』と、和巴の手へ何か
細長い紙片を握らせた。
それは ―― 和巴が一番欲しかった
”東京行きの新幹線の切符”
「使え。グリーン車だぞー」
「で、でも編集長が不在じゃ……」
「指示を飛ばすくらいなら本社でも出来る。それに、
俺が担当してる先生達はほとんどこっちに来てる
んだ」
「そうですか……じゃ、遠慮なく使わせて頂きます」