『続・7年目の本気~岐路』
速水にマンションまで送って貰った頃には
かなり気持ちに余裕も出来て。
お風呂でゆっくり休んだ後、湯上がりのビールを
飲んでた所へ真守が帰ってきた。
あぁ ―― !
こっちの問題もあったんだ。
と、真守の顔を見て思い出し。
ため息が出た。
「もう ―― そんなあからさまにため息つかんでも
いいじゃん」
「ご飯は?」
「食ってきた」
「お風呂は?」
つい口が滑って「入ってきた」と答えてしまい、
”あっ”っと口を塞いだが後の祭り。
和巴は静かに怒りを押し殺した表情で ――
「なら、そこに座って」
「あ、やっぱメシを ――」
「座りなさいっ」
「はい」
真守は弾かれたよう和巴の向かいに座った。
「もう、私の聞きたい事は分かってるよね」
「……とりあえずは、先に謝っておく。ごめんなさい」
「謝らなきゃいけないような事をしたの?」
「それは断じてない。けど……」
「けど?」
「多分、和ちゃんとか母さんとか父さんとかに
すげぇ迷惑かけると思うから」
「じゃあ、彼女との交際がいけない事だって
分かってるのね」
「……いけない事、だとは思ってない。藍子さんに
とっての俺は弟みたいな存在らしくて、一緒に
いると心が休まるって」
「なら、この先もずっと今と同じポジションを
維持していける?」
「??……」
「あのお店で見た藍子さんとあなたは、ただの友達
同士には見えなかったから、それが心配なの」
核心を突いた和巴の言葉に、
真守の表情へ動揺が走る。
「もし、弟以上の関係を求めるなら藍子さんとは
別れなさい」
「そ、それは……それは出来ない」
「真守っ」
「……俺は、彼女が、藍子さんが好きなんだ。
1人の女性として」
和巴はテーブルの上で組んでいた両手へ
顔を伏せた。
「それにさ、藍子さんと俺がくっついた方が和ちゃんに
とっても好都合なんじゃないの?」
顔をゆっくり上げ、真守を凝視する。
「各務の次男坊と晴れて一緒になれるワケだし」
「……それ、本気で言ってる?」
「だいたい今どき政略結婚なんてナンセンスも
いいとこだろ。誰かを犠牲にしての結婚なんて
間違ってる」
「間違っていようが、正しかろうが、最終的には
当人同士が決めた事なんだから外野がどうこう
言える事じゃないの」
「だから目を真っ赤に泣き腫らしてまで好きだった
男もあっさり諦める?! 次男坊は未だに未練
タラタラで、手紙送りつけてくるのにっ!」
「煩い 煩い! あんたに私達の何が分かるって
のよ?!」
「何にも分かんねぇよっ。分かりたくもない」
和巴は再び顔を伏せ、嗚咽を漏らす。
「和ちゃん……泣くなよ」
「……ねぇ、マモ。あんただって分かってるんでしょ。
……このままじゃあんた達、幸せになんかなれない」
「……いやだ……藍子とは絶対別れない」
「真守……」
それから真守は踵を返して
「今日は友達んとこ泊まる」と
足早に出て行った。
しばらくして顔を上げ、涙を拭った和巴は、
スマホを手に取り何処かへコールする。
R R R R R ――――
『はい、もしもし』
「巽さんですか? 和巴です」
『あぁ、めぐみちゃん大変だったね。僕や幸作で
出来る事があったら力になるよ』
「ありがと」
と、返事をしながら、何かあればすぐこうして
助けになってくれる友達がいるって、
素晴らしい事だと改めて感じている。
「でね、早速だけど、もうすぐそっちに真守が
行くと思うの ――」
身勝手な願いだが ”何にも聞かず泊めてあげて
欲しい” と頼み、通話を終えた。
巽・幸作カップルはこのマンションから
徒歩10分ほどの巽の実家で暮らしている。
かなり気持ちに余裕も出来て。
お風呂でゆっくり休んだ後、湯上がりのビールを
飲んでた所へ真守が帰ってきた。
あぁ ―― !
こっちの問題もあったんだ。
と、真守の顔を見て思い出し。
ため息が出た。
「もう ―― そんなあからさまにため息つかんでも
いいじゃん」
「ご飯は?」
「食ってきた」
「お風呂は?」
つい口が滑って「入ってきた」と答えてしまい、
”あっ”っと口を塞いだが後の祭り。
和巴は静かに怒りを押し殺した表情で ――
「なら、そこに座って」
「あ、やっぱメシを ――」
「座りなさいっ」
「はい」
真守は弾かれたよう和巴の向かいに座った。
「もう、私の聞きたい事は分かってるよね」
「……とりあえずは、先に謝っておく。ごめんなさい」
「謝らなきゃいけないような事をしたの?」
「それは断じてない。けど……」
「けど?」
「多分、和ちゃんとか母さんとか父さんとかに
すげぇ迷惑かけると思うから」
「じゃあ、彼女との交際がいけない事だって
分かってるのね」
「……いけない事、だとは思ってない。藍子さんに
とっての俺は弟みたいな存在らしくて、一緒に
いると心が休まるって」
「なら、この先もずっと今と同じポジションを
維持していける?」
「??……」
「あのお店で見た藍子さんとあなたは、ただの友達
同士には見えなかったから、それが心配なの」
核心を突いた和巴の言葉に、
真守の表情へ動揺が走る。
「もし、弟以上の関係を求めるなら藍子さんとは
別れなさい」
「そ、それは……それは出来ない」
「真守っ」
「……俺は、彼女が、藍子さんが好きなんだ。
1人の女性として」
和巴はテーブルの上で組んでいた両手へ
顔を伏せた。
「それにさ、藍子さんと俺がくっついた方が和ちゃんに
とっても好都合なんじゃないの?」
顔をゆっくり上げ、真守を凝視する。
「各務の次男坊と晴れて一緒になれるワケだし」
「……それ、本気で言ってる?」
「だいたい今どき政略結婚なんてナンセンスも
いいとこだろ。誰かを犠牲にしての結婚なんて
間違ってる」
「間違っていようが、正しかろうが、最終的には
当人同士が決めた事なんだから外野がどうこう
言える事じゃないの」
「だから目を真っ赤に泣き腫らしてまで好きだった
男もあっさり諦める?! 次男坊は未だに未練
タラタラで、手紙送りつけてくるのにっ!」
「煩い 煩い! あんたに私達の何が分かるって
のよ?!」
「何にも分かんねぇよっ。分かりたくもない」
和巴は再び顔を伏せ、嗚咽を漏らす。
「和ちゃん……泣くなよ」
「……ねぇ、マモ。あんただって分かってるんでしょ。
……このままじゃあんた達、幸せになんかなれない」
「……いやだ……藍子とは絶対別れない」
「真守……」
それから真守は踵を返して
「今日は友達んとこ泊まる」と
足早に出て行った。
しばらくして顔を上げ、涙を拭った和巴は、
スマホを手に取り何処かへコールする。
R R R R R ――――
『はい、もしもし』
「巽さんですか? 和巴です」
『あぁ、めぐみちゃん大変だったね。僕や幸作で
出来る事があったら力になるよ』
「ありがと」
と、返事をしながら、何かあればすぐこうして
助けになってくれる友達がいるって、
素晴らしい事だと改めて感じている。
「でね、早速だけど、もうすぐそっちに真守が
行くと思うの ――」
身勝手な願いだが ”何にも聞かず泊めてあげて
欲しい” と頼み、通話を終えた。
巽・幸作カップルはこのマンションから
徒歩10分ほどの巽の実家で暮らしている。