『続・7年目の本気~岐路』
出勤後、今日午後イチで予定されてる定例幹部会議の
用意をしてから、編集部へ戻ると
刑部くんに『外線入ってます、8番です』と言われた。
「―― もしもし、お待たせしました小鳥遊です」
『あ、お仕事中申し訳ございません、私(わたくし)
千束第3中学で3年D組のクラス副担任をしてます
八神、と申しますが』
千束第3……あ!
めぐみが通ってる中学だ。
「あの ―― うちのめぐみが何かしましたか?」
めぐみは要注意の問題児、という程ではないが、
私のマンションへ転がり込んでくる前、
実家の学区内で元々通っていた学校では
たびたび小さな揉め事を起こしては、
担任や生活指導から厳重注意を受けていた
ようなのだ。
『いえ、特に何かをしでかした、という事ではないん
ですが……実はこの3日ほど学校に来ていない
んです』
「は?……あの、それは、無断欠席という事ですか?」
『はぁ、そうなります。で、ご家庭で何かあったのかと
思いまして、一応ご実家のお母様へも連絡したん
ですが。小鳥遊さんの方へも知らせて欲しいと
お母様から言われた次第で』
叔母さんってば私に丸投げ?
母親としてちょっと放任過ぎるんとちゃう?
先生との通話が終わった後も、私はめぐみの
行動が分からなくて、ただ呆然としていた。
*** *** ***
あれほど、
当分の間外泊は慎むよう言ったのに……
めぐの奴、とうとう昨夜は電話のひとつも
かけてくる事なく、未だ帰ってこない。
つまり、無断外泊だ。
笙野課長や詩音さんに相談したら、
今はあまり小煩くしない方がいいと、
言われたけど。
何といってもめぐみはまだ14才。
物事の善悪くらいは自分で判断出来ると思うけど、
これが男絡みだとしたら……。
若気の至り、暴走は何よりも怖い。
私は自分の過去の経験から、
身をもって実感しているから余計心配だった。
私は今日のスケジュールを確認した上で、
詩音さんへ”午前休”の電話連絡を入れ、
マンションの1階エントランスホールでめぐみを
待ちかまえている。
昨夜から幾度となく送り続けていたLINEで
さっきやっと”これから帰る”との返事が
きたのだ。
こないだ学校帰りに、町でめぐみと一緒にいる所を
チラリと見かけた30代前半位の男。
きっと今もその男と一緒にいるんだ。
今日こそは話をつけようと、
私は覚悟を決めていた。
場合によっては、今後一切めぐみに近づかないよう
釘を刺しておいた方がいいかもしれない。