『続・7年目の本気~岐路』
風で吹き下ろされた邪魔な前髪を、
イライラしながら払う。
気を紛らわすのに一服しようか? と
自販機に向かおうとした時、エンジンの音がした。
振り返ると、
深紅のポルシェが横付けされ停まった。
スポーツカータイプの派手な車だ。
スモークガラスなので、中は見えない。
運転席から長身の男が出てきた。
そのまま助手席に回りドアを開けると、
エスコートするかのように手を差し伸べる。
出てきたのは、めぐみだった。
間違いない、男はこの前見かけた奴だ。
めぐみは、これまで見せたことのないような
はにかんだ笑顔で男を見上げている。
エスコートされながらこちらに向かってくると、
私を見つけて顔色が変わる。
「おはよう、めぐ。朝帰り、いや、昼帰りとは
やってくれるね」
「あ……ごめん、なさい、和ちゃ……けど、がっこは
休みだし ――」
めぐみの弁解を聞くのは後回しにして、
私は男の方に向き直った。
「私はめぐみの保護者代理で小鳥遊といいます。
失礼ですがあなたはどなたですか?」
「失礼、私はこういう者です ――」
胸ポケットから名刺を一枚取り出すと、
私に手渡した。
―― 株式会社 大河内興行
代表取締役社長 倉本 孝
「もういいでしょ? 倉本さんは社長さんだから
物凄く忙しいの」
私がまとっている不穏な雰囲気を感じ取ってか、
めぐみが場を取り繕おうとしたが、私は引かない
ここでうやむやにしてしまうわけにはいかなかった
この”倉本”という男とめぐみの関係をきちんと
問いたださなければ。
「少し、お話し伺ってもよろしいですよね?」
「和姉っ」
「いいですよ。めぐ、俺は大丈夫だから」
刺すような鋭い切れ長の目が、
めぐみに向けられるときは別人のように甘い。
いったい何者なのか?
引き止めておきながら、
私は言いようのない不安に襲われるのだった。
数十分後 ――
部屋に戻っためぐみは早速私へ食って掛かった。
「―― 酷い! 初対面の倉本さんにあんな
プライベートな事まで根掘り葉掘り聞くなんて!
いくら何でも失礼だわっ! 非常識よ」」
「保護者に無断で未成年の中学生を無断外泊
させる方が、よっぽど非常識だと思うけど」
「それはさっき倉本さんだって、きちんと謝って
くれたでしょ」
「……あいつ、どう見たって堅気じゃないよね?
今後2度と会わないで」
「何よ、そーゆう自分だって、大学の時付き合ってたの
ヤクザの幹部じゃない!
私が何も知らないと思ってるの?」
はぁっ??
も、もしかしたらそれ……匡煌さんのこと?
匡煌さん……あなた、
とんでもない勘違いされてるよ。
ま、グリズリーみたいな巨漢で鋭い眼光の見た目は
暴力団幹部に見えなくもないけど。
「それ、もしかしたら、
あの倉本って野郎に聞いた?」
普通の中坊がちょっと調べたくらいで
暴力団幹部の顔が分かるハズはない。
「だったらどうだっての?!
言っとくけど私、彼と別れる気はないから」
「めぐみっ!」
パタ パタ パタ ―― バタン!
めぐみは自室に引きこもってしまった。
イライラしながら払う。
気を紛らわすのに一服しようか? と
自販機に向かおうとした時、エンジンの音がした。
振り返ると、
深紅のポルシェが横付けされ停まった。
スポーツカータイプの派手な車だ。
スモークガラスなので、中は見えない。
運転席から長身の男が出てきた。
そのまま助手席に回りドアを開けると、
エスコートするかのように手を差し伸べる。
出てきたのは、めぐみだった。
間違いない、男はこの前見かけた奴だ。
めぐみは、これまで見せたことのないような
はにかんだ笑顔で男を見上げている。
エスコートされながらこちらに向かってくると、
私を見つけて顔色が変わる。
「おはよう、めぐ。朝帰り、いや、昼帰りとは
やってくれるね」
「あ……ごめん、なさい、和ちゃ……けど、がっこは
休みだし ――」
めぐみの弁解を聞くのは後回しにして、
私は男の方に向き直った。
「私はめぐみの保護者代理で小鳥遊といいます。
失礼ですがあなたはどなたですか?」
「失礼、私はこういう者です ――」
胸ポケットから名刺を一枚取り出すと、
私に手渡した。
―― 株式会社 大河内興行
代表取締役社長 倉本 孝
「もういいでしょ? 倉本さんは社長さんだから
物凄く忙しいの」
私がまとっている不穏な雰囲気を感じ取ってか、
めぐみが場を取り繕おうとしたが、私は引かない
ここでうやむやにしてしまうわけにはいかなかった
この”倉本”という男とめぐみの関係をきちんと
問いたださなければ。
「少し、お話し伺ってもよろしいですよね?」
「和姉っ」
「いいですよ。めぐ、俺は大丈夫だから」
刺すような鋭い切れ長の目が、
めぐみに向けられるときは別人のように甘い。
いったい何者なのか?
引き止めておきながら、
私は言いようのない不安に襲われるのだった。
数十分後 ――
部屋に戻っためぐみは早速私へ食って掛かった。
「―― 酷い! 初対面の倉本さんにあんな
プライベートな事まで根掘り葉掘り聞くなんて!
いくら何でも失礼だわっ! 非常識よ」」
「保護者に無断で未成年の中学生を無断外泊
させる方が、よっぽど非常識だと思うけど」
「それはさっき倉本さんだって、きちんと謝って
くれたでしょ」
「……あいつ、どう見たって堅気じゃないよね?
今後2度と会わないで」
「何よ、そーゆう自分だって、大学の時付き合ってたの
ヤクザの幹部じゃない!
私が何も知らないと思ってるの?」
はぁっ??
も、もしかしたらそれ……匡煌さんのこと?
匡煌さん……あなた、
とんでもない勘違いされてるよ。
ま、グリズリーみたいな巨漢で鋭い眼光の見た目は
暴力団幹部に見えなくもないけど。
「それ、もしかしたら、
あの倉本って野郎に聞いた?」
普通の中坊がちょっと調べたくらいで
暴力団幹部の顔が分かるハズはない。
「だったらどうだっての?!
言っとくけど私、彼と別れる気はないから」
「めぐみっ!」
パタ パタ パタ ―― バタン!
めぐみは自室に引きこもってしまった。