明日キミに聴かせたい

「いらっしゃいませ」

うわ、可愛い。黒髪なのに所々赤に染めていた女性店員の姿に、この人絶対音楽してる！！と勝手に決めつけた。


「あ、あの、ネットで予約したんですけど…」


そう言いながら私はスマホを取り出して予約完了メッセージの画面を店員に見せると「はい、少々お待ちください」と言って奥に入っていった。

そしてすぐに戻ってきた店員は手にしている透明な袋からCDを取り出し、背後の棚から特典のポスターを探し出してCDと一緒に私の目の前に並べた。


「ご確認お願いします。こちらでよろしかったでしょうか？」


そう言われて見た私の瞳にメルマガにもサイトにも載っていなかったアルバムのジャケットがようやく映った。

そのジャケットには、イヤホンを誰かに差し出しながらも黒いフードを目元まで被ったコウの横顔が写っていた。


「はい」

そして手際よくレジを打ち、私は流れ流れて母から貰ったアルバム代を支払い、レシートを受け取った。

「こちら特典のポスターになります。ご一緒に入れさせて頂きますね」と言いながら店員は慣れた手つきで袋に入れると、店の名が入ったシールを持ち手部分に貼って私に袋を手渡した。


「ありがとうございます」

「ありがとうございました～」


小走りで店を出た私は、大きく息を吐き、やり遂げたことに喜びを感じていた。