明日キミに聴かせたい

手にしている袋から少しはみ出した丸まったポスターを横目に早く家に帰って飾らなくちゃ。聴かなくちゃ。と店の前のエレベーターのボタンを押し、エレベーターが来るのを待った。

やがて上からエレベーターが降りてきてチーンと私がいる階に止まり、扉が開いた時、誰かの声がした。


「白神さん?」


その瞬間に背中にじんわりと汗をかき、手をぎゅっと握りしめ、このまま顔を上げずにいたら間違いだと思ってもらえるかもしれない。


誰だ?誰だこの声……


怖い。怖い。怖い。怖い。


更に強く袋を持っている手に力を入れた時、コウがいる。今の私にはコウがいる。大丈夫。怖くない。私は……強くなる。


ふっと顔を上げた時、こんなに目を見開いたのも、こんなに緊張したのもきっと初めてだとでもいうような感覚になった。

< 171 / 250 >

この作品をシェア

pagetop