明日キミに聴かせたい
あんなに有名なバンドなのに?と奈津に訊ねると、奈津は会場前に並ぶ長蛇の列の最後尾を探しながら言った。
「たまにライブハウスでもやるんだ。大きなとこより近くで見れるならファンにとっては最高なんだけど、キャパ少ないからチケットの倍率かなり上がるんだよね。だから今回チケット取れて私の今年の運は全て使い果たしたよ~あはは」
「今年って……言ってる間に終わるじゃん」
「まぁね。ははは」
最後尾に辿り着いた私たちはグッズを何買うか悩んでいた。と言っても実質悩んでいたのは奈津の方で、私はとりあえずマフラータオルだけ買おうと思っていた。
グッズ購入の順番が来た時、私はタオルだけで早く済み、悩みながら買っている奈津を見て、並ぶ人たちを見ながらこんなに沢山のファンがいてもこれもほんの一部に過ぎないのか。と改めてチャットのファンの多さに一人驚いていた。
「お待たせ~」と近づいてきた奈津は沢山のグッズを抱えながらにやけていた。
「開場までもうちょっと時間あるからカフェでゆっくりしよっか」と鞄にグッズを詰めて奈津は私を連れて近くのカフェに入った。
そして約一時間後、私たちはカフェを出て開場待ちをしている列に向かった。