明日キミに聴かせたい

曲を耳に入れながら口ずさみ、拳を高く掲げたり、振りながら「オウッ!オウッ!」と叫ぶお客さんにつられて私も控えめに手を振ったりしていた。


その時、なんだか違和感が急に私を襲った。


あれ?なんかおかしいな。

なんだろう……

目の前にいるメンバーはちゃんと演奏をしていて、ちゃんと歌っていて、盛り上がりだって熱気だって凄いんだけど、一体何が……


「ねぇ奈津…あれハルだよね?」

「ん?そうだけどー?」

周りの声と音の大きさの中で話しをするのは難しく、奈津の耳元に近づて訊ねると、奈津は私の耳元に近づて返事をしてくれた。

そうだよね。あれはハルなんだよね。


「ハルはハルだけど…なんかハルじゃないみたいだ…」


そんな私の呟きは誰にも聞こえることもないまま掻き消された。

< 187 / 250 >

この作品をシェア

pagetop