明日キミに聴かせたい
曲を耳に入れながら口ずさみ、拳を高く掲げたり、振りながら「オウッ!オウッ!」と叫ぶお客さんにつられて私も控えめに手を振ったりしていた。
その時、なんだか違和感が急に私を襲った。
あれ?なんかおかしいな。
なんだろう……
目の前にいるメンバーはちゃんと演奏をしていて、ちゃんと歌っていて、盛り上がりだって熱気だって凄いんだけど、一体何が……
「ねぇ奈津…あれハルだよね?」
「ん?そうだけどー?」
周りの声と音の大きさの中で話しをするのは難しく、奈津の耳元に近づて訊ねると、奈津は私の耳元に近づて返事をしてくれた。
そうだよね。あれはハルなんだよね。
「ハルはハルだけど…なんかハルじゃないみたいだ…」
そんな私の呟きは誰にも聞こえることもないまま掻き消された。