明日キミに聴かせたい

それからライブが終了するまでの時間、私はハルのはずなのにハルじゃないみたいなハルを目で追いかけていた。


「アンコール!アンコール!」


と2回目のアンコールを叫ぶお客さんをよそに会場内の明かりは付き、スタッフがドアを開けてお客さんを誘導し始め、ライブが終わったと余韻に浸りながらドリンク引き換え券を手にドリンクコーナーに向かう人もいれば、そのまま帰っていく人もいる中で奈津は自分の分と私の券を持ってドリンクコーナーに向かった。

私は出て行く人たちの邪魔にならないように隅に立っていると「さっきはすいませんでした」と近づいてきた一人の男性と目が合った。


「え?」

「さっき肩をぶつけてしまって…」

「あ、いえいえ。暗かったですし」


そんなやりとりをしていると男性は「さっきハルじゃないみたいって言ってましたよね?」と理由を訊ねてきたので、私は思ったままを男性に話した。



< 188 / 250 >

この作品をシェア

pagetop