明日キミに聴かせたい

「あ、メンバーが全員本人だってわかってるんですけど、なぜかハルだけ違う人なんじゃないか?って思ったんです」

「どうして?」

「以前チャットが出演した番組で演奏してた曲の時のハルの弾き方がちょっと違う気がし……あれ?あの……もしかして……ハルさ…んですか?」

「内緒ね」


そう言って目の前の男性改め本物のハルは人差し指を自分の唇に当てて内緒のポーズをして見せた。


「どうして違う人に演奏させてたんですか?」

周りに気づかれないように声の音量を下げながら私はハルに問いかけた。


「ちょっと…ね♪」

「え…」

「羽流~オレンジジュースで良かっ…え、誰?」

「あ、じゃあ失礼します」

「うん、またね」

またねなんて普通無いと思うけどな。と思いながら奈津を連れて会場の外に出た。

そして「あの人誰?」とまだ言っている奈津に私は周りに気づかれないようにまた声の音量を下げて「ハル。本物のハル」と言うと奈津は口をパクパクさせながら驚いていた。
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