明日キミに聴かせたい
奈津の口を塞ぎながら私は、テレビで見た時の違和感を再び抱き、ハル本人に小さな声で問いかけた。


「あの…もしかして花瀬先輩の…」


すると、私の声に花瀬先輩が振り向き、私たちは目を合わせた。

先輩は私の姿を目に「俺の兄貴だよ」と答えたことで、私の違和感は砂とな、夜風にさらわれて綺麗に消えた。

道理で似ているような気がしたわけだ。


「初めまして、名雄の兄貴の花瀬光希(はなせこうき)です。そうだ!ここじゃなんだからみんなでうちにおいで。よし、移動だ!」

そう言うと光希さんは事務所のスタッフらしき人にワゴン車を運転させ、私たちを連れて自分の自宅に移動した。

「本当に芸能人が乗る車って外からは中って見えないようにしてるんだ!」とか「あのハルが花瀬先輩のお兄さんなんて信じられない!」とか私の隣で奈津の頭はゴチャゴチャとまだ整理が出来ずにいた。


「さあ着いたぞ~降りた降りた~」


しばらく車を走らせ、着いた先は高層マンションの真ん前だった。

「セレブ…」

思わず私が呟くと奈津は「だよねー。私も前に来た時びっくりした」と隣で言いながら私と同じようにマンションを見上げていた。

< 192 / 250 >

この作品をシェア

pagetop