明日キミに聴かせたい

「はぁ…」


なんか今日も色々事が起こりすぎて頭がパンパンだなぁと用を済ませてドアを開けた時、みんながいるリビングとは別の部屋に光希さんが入って行くのが見えた私は、音を立てないように廊下を歩き、小さくその部屋をノックしてドアを開けた。


「あ、羽流ちゃんか…どうしたの?」

「あ、光希さんが入って行くのが見えたので…」

「そう」

「あの…」

「あ!そう言えばさっき会った時は気がつかなかったんだけど、羽流ちゃんあの日よりだいぶ明るくなったんだね」

「あの…日…?」

「やっぱ覚えてないか~まあ俺もまた会うまで忘れてたんだけどさ、ほら学校の桜の木の前で…」


その言葉を耳にした時、私の目の前に散りゆく桜たちが風にさらわれて私の頬をかすめていった。


"寂しいね…"

"また春が来るのが楽しみです"

"きっとその時には君は強くなれてるよ"


「…また…春が来るのが……楽しみです……」


すると光希さんは優しく、温もり溢れる笑みを私に向けながら言った。


「きっと…その時には君は強くなれてるよ…」


あの日と何一つとして変わらない声で。


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