明日キミに聴かせたい

で、なぜこんなことになってるんだ?


「・・・」

「・・・」


チラッと花瀬先輩の横顔を見ると、先輩は私が見るより早く私の横顔を見ていたようで目がバッチリ合い、お互い顔を逸らし、シンとした時間が続いた帰り道。


切り出したのは花瀬先輩だった。


「あ、満月…」


その声に夜空を見上げると、綺麗な満月が賑やかな街の上で私たちの行方を見守ってくれていた。

私たちの行方って何よ。それは見ている人に何か誤解を招くから取り消し取り消し!!


「綺麗ですね…」

「うん…白神さんには敵わないけどな」

「え?」

「へ?あ!い、いや!違う!そういう意味じゃなくて!!いや、そういう意味だけど、あ、や、その、俺何言って……あはは…は…」


すれ違う人たちは花瀬先輩があたふたしてようが立ち止まることもせず通り過ぎて行くし、街は静まることなくどこかしらから声が聞こえる。

あははと笑う声が聞こえる。

あ、私なんとも思わなくなっているという事に今更気づいた。

賑わう街に飛び交う誰かの笑い声さえも、ずっと聞く度に思い出して震えていた足。
聞く度に思い出して涙を流していた目。
聞く度に思い出して手で塞いだ耳。
聞く度に思い出して傷んだ見えない傷あと。


「白神さん」


隣を歩く花瀬先輩に気がいきすぎていたから?



あ……この空気は……何?




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