明日キミに聴かせたい
ー嘘です。先輩と会った記憶なんてないです。
奈津がすぐに返事を返すと、
ーいや本当に
ーじゃあどこで?
またまた奈津がすぐに返事を返すと、
ー学校で
「やっぱ学校で会ってんじゃーん」
奈津はにやにやしながらみかんを食べる私の背中を軽く叩いて笑った。
そして私は奈津からスマホを取り上げて画面を見つめて返事を打った。
ー私その時先輩と会話しましたか?
ーうん。
ーどんな?
ー散る桜の木を見てたキミに「寂しいね」って俺が言ったら「また春が来るのが楽しみです」って、覚えてない?
「ちゃんと会話してるじゃーん!」と言う奈津をよそに私は春のその記憶を探った。
そして私は微かに怒りを生み出し、返事をすることを止めた。