明日キミに聴かせたい

やがて雨が止んだことを部屋にやって来た母から聞き、奈津は母からビニール袋いっぱいに入ったみかんを受け取って本当にご飯を食べずに帰った。

帰り際、玄関で奈津は私に言った。


「もうちょい花瀬先輩とやりとりしてみたら?」

「…うん」

「それで調べて欲しいことあったらいつでも潜入捜査するからさ!じゃっまたね~」


部屋に戻り、ベッドに寝転がりながら枕元に置かれたスマホを手にしてイヤホンを挿し込み、いつものようにコウの曲を聴きながら先輩からのメッセージを表示して少し唇を噛みしめた後、私は怒りを消してメッセージを打った。

ーなんでそんな嘘つくんですか?
あの時、私に話しかけたのは先輩じゃないですよ。


この記憶には絶対的な自信があった。

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