明日キミに聴かせたい
付けたままのテレビでは、もうすぐやって来る紅葉シーズンと題して特集をしている番組が流れていた。
曇った空を見ながら、紅葉狩りとか混んでる所に出かけるなんて今の自分には考えられなかった。
「じゃ、行ってくるね」
「いってらっしゃい」
今日は日曜日。にも関わらず父は友人の田中さんに誘われて映画を観に出かけ、母もまた友人の佐藤さんに誘われて昼から出かけてしまった。
玄関で母を見送ってドアが閉まった時、自分の黒のローファーが目に止まり、鍵を閉めて部屋へと戻った。
"し~ら~か~み~はははは"
思い出してしまったせいで声が聞こえて溢れ出そうな何かを必死で飲み込んだ時、ピンポーンと家のチャイムが鳴ったことで我に返った私は、玄関へと向かった。
そして黒のローファーを横目にゆっくりとドアを開けた。