明日キミに聴かせたい

目が覚めたのは目覚ましが鳴る一時間も前の冷たい空気が部屋中を包み込んでいる朝だった。


「んーーーぁああっ」


いつもは目覚ましが鳴っても止めたまま二度寝してしまう私が、まさかの一時間も前に目を覚ませるなんて奇跡だな!ミラクルだな!アンビリーバボーだな!ビックリだよ博士!!!とまぁ冗談はこれぐらいにして、学校に行く仕度をしながら私は充電満タンのスマホを横目に羽流を想った。

あ、私は羽流じゃないよ?
奈津ですよー。加山奈津。あははは。


「よし、行くか」


スマホをブレザーのポケットにマナーモードにして入れ、鞄を手に部屋を出ると、キッチンで母がお弁当を作り終えていた。

「おはよう」

「あ、おはよう奈津。はい、お弁当」

「ありがとう」と受け取る私に母は「朝ご飯は?」と聞いてきたので「今日はいらなーい。いってきまーす」と言って靴を履き、私は家を出た。

今日の私はいままでの私ではないのです。と心の中で母に呟きながら。

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