明日キミに聴かせたい
バッとその場で立ち上がった私は、ベッドに転がる犬のぬいぐるみを奈津に向けて投げた。
「ちょ、羽流、やめ、やめ…」
どんどん奈津に向かってぬいぐるみを投げつけたけれど、ベッドに転がるぬいぐるみの数は少なく、すぐに投げる物がなくなってしまった私は、座ったままの奈津を見下ろしながら何故教えたのかと問いかけた。
「先輩さ、羽流のこと知ってたらしくって、ずっと見かけないから心配してたって。親友なんですって話したら、自分も友達になりたいなって」
「は?そんな心にも無いことを…」
「けどね、今の羽流の状態話したらすごく気にしてくれてたよ?俺で何か力になれることがあればって」
「あるわけないし、つか話したの?私が不登校で引きこもってるって?!勝手にあんな奴にペラペラ話したの?信じらんない最低最悪マジなんなの…」
「だから羽流がまた学校に来れるように橘先輩も力になれることがあればって…」
「だからあるわけないでしょ!そんな奴にどうこう出来るわけないって!!大体何勝手に人のID教えてくれちゃってんの?は、どうせ奈津のことだから橘先輩に好かれたくてほいほい教えたんでしょうけど、私からしたらマジで信じられないんですけど」
「羽流…」
「ああーー有り得ねぇー」
「羽流…あの…」
「ごめん帰って」
奈津に近づいた私は、グイッと奈津の腕を掴んで無理矢理立たせ、玄関まで引っ張り、ドアを開けて靴下のままの奈津を押し出し、靴と鞄を奈津に向かって投げてそのままドアを閉めて鍵をかけた。
羽流!!と何度か呼ぶ声がしたけれど、私はそのまま部屋へと戻った。