リングサイドブルー
仕切りの向こう側では開発班の社員たちが忙しそうにキーボードを叩いている。帰り際に挨拶をしたところで、白い目がこちらへ向くだけだ。

ならば、余計なことはしないのがお互いのためと、千晃は声もかけずに通り抜け、そのままエレベーターホールへ向かった。

 この会社には大きく分けて二つの部門がある。多種多様な企業からの依頼に対応できる、エリート社員ばかりを集めた外部企業向けの部門と、その他の社員を寄せ集めたグループ企業向け部門だ。千晃は後者組織の運用班に所属している。

 会社が、本来主な仕事であるべきはずの、グループ企業向けの部門に力を入れないのは、継続的な取引が約束されていて、納期コストの縛りが緩やかだからだ。

 そして、売り上げが好調な外部企業向けの部門に優秀な人材を回していった結果、異動のたびに部門格差が生じていった。

今はそれを会社側でも完全に割り切って、ライフワークバランスへの取り組みという体で、線引きした。
< 3 / 102 >

この作品をシェア

pagetop