あの時、見上げた空の青さ
木野崎はまだはしゃいでいたので、先生が来るかもしれないからと俺が止めた。

木野崎は大人しく、すっかりペンキが剥がれたベンチに座った。少し不満そうだ。

「なんで、俺がここに来てるって分かったの?」

「下から見えたの。」

俺が屋上に入り浸っていたことは、バレていたらしい。木野崎はなんでもないように言うが、よほど視力がないと下から見えはしないと思うが。

その証拠に、下にいる他の生徒は俺たちに気付いてさえいない。

「水原ー」

木野崎が間延びした声で俺を呼んだ。

「私もここに来ていい?」

こんなこというのはあれだが、それは嫌だった。
ここは唯一、俺が休める場所なんだ。

「それは、」

「やめろって言っても来るけどね」

じゃあ聞くな、と突っ込みたくなったが心の中だけにしておいた。

「明日もこの時間に来る?」

木野崎のクリクリとした瞳が、俺を見つめた。
俺がいないと屋上に入れないからか。

「…あぁ」

小さく答えると、木野崎は笑みを浮かべた。すると木野崎のスマホに着信があり、木野崎は慌てて屋上の扉に向かった。

「じゃあ、また明日ね!バイバーイ」

「…また、な。」

振り返り、笑顔で手を振った木野崎に、無愛想な返事しか返せなかった自分が少し恥ずかしかった。
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