あの時、見上げた空の青さ
「ただいま」

家に帰るとすぐに制服を脱ぎ、着慣れたよれよれのジャージに着替えた。そしてゆっくりしようとソファに腰掛けたときだった。

「たっだいまー!」
「ただいまー」

玄関から声がした。妹と弟が帰ってきたようだ。

「おかえり」

妹の秋音はリビングに入ってくると、まっさきに俺に飛びついた。

「秋音?…何か嫌なことでもあったのか?」

「んーん、別に。」

そう言いながら、俺の胸に顔を埋める。秋音は嘘をつくのが下手だ。分かりやすく落ち込んでいる。

「また賢太にでもいじめられたんじゃない?」

言って苦笑いしたのは、弟の幸也。

「そうなのか?秋音。」

秋音は何も言わなかったが、沈黙を肯定と受け取った俺は、隣の家に住む賢太のところに注意をしに行くことにした。

「亮兄、母さんは?」

「今度は1週間ロンドン。昨日帰ってきたと思ったらすぐ出てくし。本当に自由だよな。」

「そっか。亮兄、さっき帰ったばっかりだよね。俺夕飯作っとくから、賢太のとこ行ってきて。」

そう言いながらエプロンをつけている幸也。
本当にできた弟だ。

「亮兄、行っちゃうの?」

秋音は上目遣いで俺を見た。母に似て目が大きく、整った顔をしている秋音は、自分の可愛さを十分に理解している。

「ちょっと出かけて来るから。待っててな。」

秋音の頭を優しく撫でると、秋音は小さく頷いた。

秋音を幸也に託して、俺は隣の家に向かった。
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