あの時、見上げた空の青さ
ピンポーン

隣の乾家のインターホンを押した。

「はーい。あら、亮くん?どうしたの?」

出てきたのは賢太のお母さんだった。人懐っこい笑みを浮かべた賢太のお母さんは、俺を見て不思議そうに首を傾げた。

「ちょっと賢太を呼んでもらえませんか?話がしたいので。」

「えぇ、分かったわ。ちょっと待ってね。」

賢太のお母さんは、再び笑みを浮かべると一度玄関の扉を閉めた。

数秒後、賢太が不安そうに出てきた。

「…話って何?」

賢太は心当たりがあるのか、気まずそうに目線を下げた。

「秋音のことなんだけど。賢太、お前、秋音に何かしたか?」

賢太の身体が強張った。
口元がキュッと締められる。

「俺じゃないけど…クラスの奴が…」

それから言葉が止まってしまった。賢太は迷っているようだ。

「今回はお前じゃないんだろ?何があったんだ?」

賢太はいつも秋音にちょっかいをかける。ちょっとしたイタズラだが、秋音は相当嫌なようだ。

「…クラスの奴が、俺と秋音が付き合ってるってひやかし始めて。否定しても誰も聞いてくれなくて。秋音はそれが嫌だったみたい。」

賢太の声に元気がない。秋音に本気で嫌われたと思っているようだ。

「心配するなよ。大丈夫だ。」

賢太の頭に手を置く。賢太の目が俺を見つめた。

賢太のちょっかいは、好きの裏返しだと俺は思っている。まあ、賢太は分かりやすいし。

「明日にはお前と一緒に登校してるよ、秋音は」

賢太は小さく頷いた。相当こたえていたらしい。
これで秋音へのちょっかいも減ると良いのだが。

俺は賢太のお母さんに礼を言い、賢太に別れを告げて、家に帰った。
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