さざなみの声
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そして翌日。名古屋の両親も喜んで行かせてもらうと言ってくれた。シュウの家族も、みなさん大丈夫だと分かった。レストランも副社長に聞いてもらって予約で受け付けてくれた。直接レストランに電話を入れて人数と予算を決めて、お料理はお任せした。
その後は、とにかく部屋の片付け。大家さんに二月いっぱいで解約をお願いしてあった。その時、部屋を見に来て家具や冷蔵庫はどうするのと聞かれ、もう十年使ったから業者さんに回収に来てもらうつもりだと話したら、姪っ子が四月から大学に通うのに、このアパートに住むつもりで、もし良かったらそのまま置いて行ってくれないかと言われた。
その代わり姪っ子さんが来るのは三月半ば。それまで居てくれて構わないと願ったり叶ったりの好条件。私の荷物だけ片付ければ済む。本当に助かった。こんな事があっていいのだろうかと思ったほど。約七年、お世話になった部屋を家具の裏側まで丁寧に掃除した。私の部屋も、シュウのマンションも順調に片付いていった。
ところが私は大切な事を忘れているのに今頃になって気付いた。みゆきと麗子にシンガポールに行く事、シュウと結婚した事、何も知らせていなかった。どうしよう……。
「本当なら結婚式に呼ぶはずの二人なんだから連絡して会っておいでよ」
シュウに言われ、みゆきも麗子も都合が良い二十五日の夜に会う約束をした。ちょうどシュウも会社の人達が送別会を開いてくれる日だと言っていた。
そして二十五日。いつもの居酒屋へ行くと、もう二人とも来ていた。
「久しぶり。ごめんね。ずっとバタバタしてて。今もしてるけど」
「おめでとう。やっぱり寧々はシュウと結婚する運命だったのよ」と麗子。
「そういう事ね。誰が一番喜んでると思うの? 私たちなんだからね」
みゆきに言われ……。
そうだった。この二人が居なかったら私とシュウは出会う事もなかったかもしれないと思った。
「二人には感謝してるから、今まで本当にありがとう」
「何言ってるの。さぁ今夜は、しっかり飲もう。独身最後の……じゃないよね。もう籍入ってるんだから……」とみゆき。
「とにかく寧々とシュウの幸せに乾杯!」
「ありがとう」
「三日にはシンガポールに発つのよね。すぐよね。きょうシュウはどうしてるの?」
と麗子が聞いた。
「会社の人が送別会をしてくれてるみたいよ」と言うと
「昔の女に会ってるかもしれないわよ。君とは終わりだってね」
するとみゆきが
「バカねぇ。シュウは大学の時から、寧々ひとすじだったでしょう」
「言ってみただけよ。シュウに限って絶対ないだろうから」
と麗子は笑っていた。
やっぱり女友達は良い。久しぶりに飲んで食べて楽しい時間を過ごした。シンガポールから帰ったら、また集まろうと約束した。その前に遊びに行くから案内してとも……。