さざなみの声
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割烹料理の店は隠れ処っぽい場所にあって駐車場も裏側。予約を入れておくと誰にも会わずに個室に入れる。お料理は季節の食材を使って綺麗に盛り付けられていた。
「食べるのが、もったいないくらいね」
「さぁ食べよう。美味そうだ」
「いただきます。……本当、美味しい」
「ここなら誰にも会わずに食事が出来るから、また来ような」
二人だけで気兼ねなく食事が美味しく食べられる。きっと高いんだろうなと思ったけど幸せだった。食事が済んで……。
今夜は、いつものシティホテルではなく少しドライブ気分で走って見付けたホテルに入った。誰にも会わずに部屋に入れる。そして誰にも会わずに帰れる。啓祐と私のようなカップルには最適な……。
選択肢のない部屋を選んで啓祐さんが先に入った。想っていたより綺麗で清潔感もある。何より広くて閉ざされた世界なのに開放感があった。
「さぁ寧々、シャワー浴びるぞ」
「ゴルフ場で浴びなかったの ?」
「汗はサッと流して来たよ。でも男ばっかりで寧々と一緒の方が良いに決まってるだろう。湯船が広いから、きょうは、お湯に入ろうか?」
啓祐さんは浴槽に、お湯を張った。いつものように体を洗ってから初めてお湯に浸かった。二人で入っても余裕の広さ。向かい合って入ったら
「寧々、こっちにおいで……」
お湯の中を移動して啓祐さんの膝の上に座らされて後ろから抱きしめられ首筋にキスを落とす。胸をやさしくつかまれ片方の手が敏感な場所を辿り、私は湯舟の中で意識が遠退いた。朦朧としたままで、お湯から抱き上げられ丁寧に体に残る水分を拭いてもらう。気が付いたらベッドの中に居た。目を開けると啓祐のキスが、ところ構わず落ちて来る。
「大丈夫か?」
髪を撫でながら優しく啓祐が囁く。
「ううん。大丈夫なんかじゃない。もっとめちゃめちゃにして……」
私は限りなく与えられる悦びに啓祐の名前を呼び続けた……。
「寧々、今夜はどうしたんだ? いつもと違うよ」
「だって二週間と三日会えなかったもの……」
「ごめんな忙しくて。でもその間に何かあったのか?」
「何もない。早く会いたかったの。啓祐に抱かれたかった」
啓祐の胸に思いっきり甘えたかった。
会えなかった間に私はシュウと再会していた。だからって気持ちがシュウに戻る訳じゃないのに何故だかとても、どうしようもなく不安だった。
「会いたかったのは僕の方だよ。寧々の肌に触れたかった。可愛い声を聴きたかった。愛してるよ。寧々は僕のすべてだ」
「啓祐……」
帰したくなかった。一晩中でも抱かれていたかった。その夜は何度も激しく求められて何度も真っ白な世界に辿り着かされた……。このまま何もかも忘れて啓祐の腕の中に居られたら、もう何も要らない。欲しいのは啓祐だけ……。