さざなみの声
4
シャワーを浴びて髪も乾かして美容液も付けた。真っ白なコットンレースの小さなボタンが並んだワンピース。ちょっと年増の天使って感じ。自分でツッコミ。そういえば、すっぴんの顔を見せるのは久しぶりなんだ。お風呂から出ると
「さっぱりした?」とシュウ。
「うん。やっぱり汗かいてたのよね」
窓際に立つシュウの傍に行った。
「何か見えるの?」
「さっきまで見えたけど、もう真っ暗だね。ガラスに寧々が映ってる」
「年増の天使が? ちょっと若作りだったかなって」
「そんなことないよ。可愛いよ」
向かい合ったシュウの胸に頬を寄せて背中にそっと腕を回した。
「シュウ……」
「なに?」
「私、シュウのこと嫌いじゃないよ」
「うん」
「シュウが好きだから」
「えっ?」
「シュウ……愛してる」
「寧々……」
「お願いがあるの……。抱いて欲しい……」
「寧々……大丈夫か? 無理しなくても……」
「無理なんてしてない」
私は顔を上げてシュウを見詰めた。シュウから二度目のファーストキス。それは、そっと触れる優しいキスだった。そのまま抱き上げられてベッドに降ろされた。シュウに見詰められて熱い指先が頬をそっと撫でる。
「寧々……愛してるよ」
唇を塞がれる。シュウの熱に溶けそうだった。ワンピースのボタンをはずすシュウの手。肩をはずされ何も着けていない胸があらわになる。
「寧々……綺麗だ」
シュウの唇が首筋から肩そして胸の頂を捉えた。思わず声が零れる……。
「シュウ……」
シュウの素肌の熱さが私の肌に絡み付くように滑って行く。敏感な場所を適確に捉えられて甘い声が止められない。シュウが私の全てを解っていたことを今更のように思う。こんなにも愛されていたことを思い知らされる。涙が零れた。
「シュウ、愛してる」
声になっているのかどうかも解らない。私がどこかに行ってしまいそうで怖くなる。シュウ迎えに来て……。どうにかなってしまいそうなの。頭の中なのか私の全てなのか解らない。星が煌いて散らばった。そのまま私はシュウの腕の中に抱きしめられていた。
どれくらい経ったのか時間の感覚がつかめない。目を開けるとシュウのキスが降って来る。心配そうなシュウの顔が見えた。
「寧々、大丈夫か?」
「シュウ、私を嫌いにならなかった?」
「どうして?」
「十九歳の時の私じゃないから……」
「当たり前だろう。寧々は二十六歳の大人の女なんだから。十九歳の時と同じ訳ないだろう。そんなこと心配してたのか?」
「だって……私は……」
シュウの視線から目を逸らした。
「十九歳の寧々も、もちろん愛してたよ。でも今、僕が愛してるのは、ここに居る二十六歳の寧々だ。前よりも、ずっと愛してる。寧々の魅力に溺れそうだよ」
「シュウ……」
シュウの胸に顔を埋めた。思わず涙が零れた。
「寧々、愛してる。もう何があっても離さないから。寧々を傷付けるような事は二度としない。約束する」
髪を撫でられてシュウに抱きしめられたまま眠った。
満天の星が綺麗に光る夜だった。まるで二人を祝福するかのように……。