さざなみの声
3
「さてと、シュウが作ってくれたから私は後片付けするね」
「じゃあ僕は後片付けの見学」
小さなキッチン。ワンルームの独身用の部屋だから仕方ない。私が食器を洗う。後ろでシュウが見てる。と思ったらウエストに腕が絡み付き髪にキスされた。
「今夜、泊まって行く?」
「う~ん。どうしようかな」
「だって先週も家の実家だったし……」
「だから……なに?」
「決まってるだろう。寧々ってこういうところ鈍感なんだから」
「私って鈍感?」
「ううん。めちゃめちゃ敏感だよ」
首筋にキスを落とす。
「じゃあ仕方ない。泊まってあげる」
手を洗って片付け終わり。いきなり振り向かされて唇を塞がれた。シュウ熱いよ。そのまま抱き上げられてベッドに運ばれる。
「シュウ、先にシャワー浴びたい」
「このままでいいよ。すぐに抱きたい」
「シュウ……」
「寧々、愛してる……」
シュウに愛してるって言われるとそれだけで心がふんわりして、体がホワッと温かくなる。とても柔らかい気持ちになって幸せなんだって私の命の真ん中から優しい声が聞こえる。
それは波のように大きくなって小さくなって、やがてさざなみに変わっていく……。
シュウに抱かれていると不安な気持ちは綺麗に消えていってしまう。何も余計な事を考えたりしなくていい。シュウに愛されるまま感じるまま素直に私を表現すればいい。シュウの体にそのまま応えればいい。ありのままの私を伝えればいい。
そこには後ろめたさも後悔も辛い涙もない。もっと愛したい愛されたいシュウのすべてを私のすべてを。ただ幸せな時が流れていく。誰にも邪魔されない二人だけの時間をシュウと過ごしたい。一緒に居たい。
体を重ねることは心を重ねること命を重ねること。大切な想いを重ね合わせて生きること。シュウと一緒に生きていきたい。今の私は素直にそう思えるから。
「寧々、綺麗だ」
「シュウ……愛してる」