さざなみの声


 シュウに愛されたまま彼の腕の中で眠ってしまった。目覚めたのは、ほとんど朝に近い時間。まだ外は暗いけれど。シュウも眠っていた。シュウの寝顔は可愛くて大好き。シュウにはナイショだけど……。そっと唇にキスして起こさないようにベッドを抜け出して一人でシャワーを浴びに行った。

 愛された後に一人で浴びるシャワー。愛する相手が違うだけで、こんなにも私が変化する。白い胸に残された赤い小さな花。いつの間に? 消してしまいたいなんて思わない。そっと指で撫でて優しい気持ちで微笑むことが出来る。

 年齢じゃない経験じゃない。そんなことは関係なくて、どれだけ相手を心から愛して包み込めるのか、命の底から相手を大切にし思い遣ることが出来るのか……。

 シャワーを浴びて部屋に戻った。シュウはまだ眠ってる。その寝顔を見詰めていると彼が囁いているような気がした。

「愛してる……」

 愛しくて、ただどうしようもなく愛しくてシュウの腕の中に、そっと戻って私も眠った。
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